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在外やぶにらみ 第11回 在外邦人や日系人の<異文化受容性>

2008年9月17日  渡邉 正樹 (Masaki Watanabe)  

 多民族社会や国際感覚といった用語が色褪せ、ありきたりになって久しい。文化、言語や皮膚の色が異なる者同士が入り混じって暮らす生活様式が、それだけ先進諸国の主要都市では当たり前になっているのだろう。

 シンガポール、バンクーバーとすき好んでそうした環境で暮らして来た訳だが、最近ちょっと珍しい類似語に出くわした。Intercul-turalismなる言葉で、辞書を引くと<異文化受容>とあった。ある表彰状に出てきたのだが、授与された人物の業績があまりにユニークで、しかも大先輩格の知人でもあるのでご紹介したい。

 ベース奏者、クロマチック・ハーモニカ奏者、作曲家、民族音楽研究家としてバンクーバーを中心に約半世紀も国際的に活躍してきたハリー・青木氏、当年86歳の日系二世カナダ人だ。最近お誕生日祝いを兼ねた記念コンサートが開かれたので、バンクーバーらしく旧消防署の建物を改造した小ホールまでお祝いに行った。

 青木氏に贈られた表彰状の一つ、アジア太平洋文化交流担当政務次官なる州議員のそれは同氏の「異文化間の和を推進する音楽と対話」を高く評価し「まさに異文化受容性を具現するカナダ人」と称えた。

 異文化間の和とは。青木氏自身が企画、監督、さらに演奏に加わったコンサートの内容を見てみよう。アフリカの打楽器音楽、アイルランド民謡、ジャワ民謡、中国の琵琶、(カナダ人による)中国語の漫才、アイヌ民謡、日本のお伽噺の朗読、日本民謡、尺八吹奏、カナダ原住民哀歌の朗読、バッハ、モーツアルト、ブラジル民謡独唱、ロシア民謡、ジャズ等々全部書ききれない。これだけ多文化的に多様な出し物を殆ど一人で実現できる者は、多民族都市バンクーバーでも彼ぐらいだろう。

 青木氏を慕って無料奉仕で参加したミュージシャンたちは一流も含み、日系、ヨーロッパ系、アフリカ系、中国系、中南米系、インドネシア系等々人種の見本市さながらだ。国籍も様々だが、この際カンケイナイようだ。大事なのは持ち寄り分かち合う<音楽>という夫々の民族文化の生の風味なのだ。

 よく<文化交流>の名目で政府や慈善団体が外国の有名アーティストを招いて開くコンサートがある。それはそれなりに意義があろうが、青木氏率いる演奏会は、奏者たちも聴衆も身の入れ方がちょっと違う。こだわりがもっと個人的なのだ。

 青木氏は例外としても、日本人、日系人にはそうした<異文化受容性>を自ずから育む資質があるようだ。また海外にいた方が国内よりもその機会はもっとあるはずだ。

(以下次号)

(メープルタウン・パルティ08年9月号向け)

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記事提供者

名前渡邉 正樹 (Masaki Watanabe)
連絡先604-221-7393 Eメール
プロフィール東京生まれ。
特派員の父と共に一家で英国、イタリア生活を経験、東京に戻り大卒後、ロンドンでロイター通信に就職。ローマ、ワシントン、パリ各支局勤務を経て、フリーランサーに転向。
サンフランシスコと東京で70年代を過ごした後、シンガポールに移住、英字紙、シンガポール経済開発庁広報部、シンガポール航空機内誌編集を歴任。97年シンガポール人の妻、2児と共にカナダ・バンクーバーに移住。
現在は翻訳と雑文書きの傍らジャズ・ギターで仲間と<ギグ>することも。
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